研究テーマ
【技術者や研究者の組織内ネットワーク】
技術者や研究者の企業や社会におけるつながりの構造をネットワーク図として可視化し、どのようなネットワークの構造がどのような成果に結びつく傾向が高いのかなどネットワークの構造と成果の関係について研究しています。また企業の内外の「際」に立つキーパーソンを対境担当者(boundary spanner)やゲートキーパーなどと呼んでおり、その情報の出し入れの役割などについて研究が蓄積されてきました。本研究室でもこうした古典的な研究を基礎として、技術的な不連続な局面でのネットワーク構造やキーパーソンの役割の解明を進めています。
【技術戦略を効果的にする人材】
特許データなどを活用した統計的手法に基づいて技術戦略を分析しています。この研究の当面の目的は、技術開発の様々なフェイズにおいて成果を挙げてきた開発担当者に着目し、時系列的な役割を明らかにすることにあります。現時点で得られている主な知見は、プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの中間的な時期を中核的な立場で担いうる技術開発担当者の特徴は技術戦略によって異なることと、その人物像は開発組織内でもマイナーな存在であるという二点です。
[プロダクト・イノベーション]
Abernathy&Utterback(1978)に代表されるいわゆるイノベーション・ダイナミクス・モデル(A-Uモデル)は、技術戦略を遂行する上で長年に渡り有益な示唆を与えてきました。しかし今日、ハードに関する技術的取り組みだけではなく、サービス等を含めたビジネスモデルの観点から市場展開を見据えた技術戦略の策定が重要となり、旧来の考え方だけではグローバルな製品市場の動向を理解することが困難となっています。そこで我々は既存モデルを発展的に修正しプロダクション・イノベーション概念*を提案しています。
*Hiroyuki Nagano, Shuichi Ishida, Kiminori Gemba(2017) “ Exploratory Research on the Mechanism of Latecomer Advantages in the Asian LCD Industry,” International Journal of Technology Management, 75(1-4), 208-233.
[サプライチェーンから捉える製品開発]
本研究室では一貫して製品開発をサプライチェーンから捉えていきます。特に製品市場において「顧客を変えることなく技術が大幅に変化する」事例を取り上げ、そうしたことを実現する技術組織の在り方や技術戦略の策定を検討しています。これまでEV*やデジタルカメラなどを対象としてきました。
*Shuichi Ishida, Mats Magnusson, Akio Nagahira (2017) “Factors influencing Japanese auto suppliers’ predictions about the future ofnew technologies – An exploratory study of electric vehicles,” Futures, 89, 38-59.