技術に関わる研究者や研究開発組織などのミクロな取り組みは、それがやがて製品やサービスに結実すると市場へと至りマクロシステムともいうべきグローバルな人々の営みへと連結していきます。しかし現場のどのような取り組みが市場で成功するかなど多くの場合予想がつかないことがほとんどです。このようなミクロとマクロの関係の説明原理の探求はあらゆる学問領域で共通することかもしれません。
一足飛びに技術や社会に横たわるミクロ-マクロの関係を解き明かすことは困難です。そのためには「技術戦略」や「研究開発組織」を「経営システム」と捉え、そのシステムの構造やダイナミクスについて実証研究を繰り返すべきだと思います。それは、こうした社会の営みに関わる課題を演繹的に解くことはほぼ不可能だと思われるからです。しかし数学や物理などの領域からチャレンジする方がいても面白いしそれを否定しません。
ミクロの構造を捉えるための一つとして、技術者や研究者の企業や社会におけるネットワークの形態がどのような成果に結びつくのかなどの研究があります。加えて技術的に不連続な局面でのネットワークの構造変化やキーパーソンの役割の解明も進めています。
一方でマクロな産業動向におけるイノベーションのダイナミクス・モデルは技術戦略を遂行する上で長年に渡り有益な示唆を与えてきました。しかし今日、ハードに関する技術的取り組みだけではなく、サービス等を含めたビジネスモデルなどソフトの観点からの技術戦略の策定が重要となり、従来のモデルだけではグローバルな市場の動向を理解することが困難です。そこで我々はこれまでのモデルを拡張するような新たな概念の開発を進めています。ミクロおよびマクロ双方の研究は互いの関連性を見出せておりませんが、その鍵の一つは製品開発をサプライチェーンから捉えていくことにあると信じており、そうした研究も行っています。