修了生から戴いたメッセージを順次掲載していきます。
私は、大手航空会社で30年ほど機長として勤務し、主として安全管理部門を担当してきました。1999年にリタイア-して研究者に転身、ヒューマンファクター研究所を設立しました。そこで痛切に感じたことは、産業安全を極めるためには、幅広く社会全体の仕組みや事情を学ばなければならないということでした。航空会社在職中に社会人研修生として修士課程を履修してきたとはいえ、航空の実務に明け暮れしていたものですから、今一つ広い視野で安全学を学ぶことが不足していました。
その様なタイミングで、以前から懇意にして下さっていた本学大学院工学研究科教授のご紹介で、「技術社会システム専攻」が新設されたことを知りました。その設立趣旨が全く小生のニーズに適合することを知り、2008年に博士後期3年の課程へ編入学して学んできました。
MOSTで学んだことは、社会に貢献するためには、専門技術だけを学んで国家資格を取得するだけでは不十分であり、設計、製造、販売、ユーザ、廃棄処理に至る製品のライフサイクル全体に関わる社会全体を学ばなければならない、ということでした。航空分野に関しては、航空機の設計、製造、運航、整備、空港や管制、乗客、騒音や環境問題に関わる空港周辺対策など広い範囲に亘って、技術だけではなくノンテクニカルな問題処理能力を学ぶことができました。
例を挙げますと、パイロットにとって、空港設備や航空路、特に航空管制はなくてはならない重要な要素であるにも拘わらず、現役時代にはその中に浸ってしまいあまり関心を抱いていませんでしたが、入学してから航空管制官の技術訓練に関する研究にまで関心を拡げることができました。今では、航空保安大学校で講師を務めるほどに視野が広がりました。
このような視点で産業界の安全マネジメント手法を学びました。先生方の熱心なご指導のお陰で、在学2年半で念願の学位を賜り、「(株)安全マネジメント研究所」を設立しました。現在では、東北電力(株)原子力部のご支援やJR西日本の安全研究所客員研究員などを担当するほか、東京安全衛生教育センター講師など幅広く産業安全に貢献することができるようになりました。技術社会システム専攻は小生の「第2の故郷」です。
このような経験から、技術社会システム専攻は、すでに専門技術を身に着けて来られた社会人研修生に対しても、最もお勧めする専攻です。